認知症にやさしいデザインについて
こんにちわ、広報担当トン吉です。
トン吉の新年最初のコラムはNCL(ナースケア・リビング世田谷中町)の環境支援についてです。…ってそればっかりやな!なんて言わないでくださいね。去年のコラムでも環境支援について触れましたが今回はハード面についてのお話です。
NCLのホームページでも紹介しておりますが、ナースケア・リビング世田谷中町の内装は認知症にやさしいデザインを採用しております。2017年5月に開設し、7月には英国スターリング大学認知症サービス開発センター(以下DSDC)より、認知症デザイン認証で最高峰の評価である「ゴールド」を授与されました。隣接するグランクレール世田谷中町ケアレジデンスと同時受賞であり、日本では初めての受賞だそうですよ!
そもそも認知症にやさしいデザインって何?という話なんですが、認知症の方にも分かりやすいデザイン。例えば、直感に働きかけるサイン(目印)や部屋のデザインと設計、使いやすい家具など…他にも部屋の明るさだったり、家庭的な環境なども含まれます。
昨年10月に英国スターリング大学DSDCのディレクター、チーフアーキテクト、デザインサービス責任者であるレスリー・パーマー氏の来日に合わせて桜新町アーバンクリニックにお迎えして特別講演会「認知症にやさしいデザイン〜認知症の方がよりよく快適な暮らしができるデザインの考え方」が行われました。わたくしトン吉も講演会に参加してきまして、パーマー氏からお話を聞けましたのでNCLの環境デザインと併せてここに紹介しますね。
パーマー氏が最初にお話してくださったのは環境デザインが認知症の方にもたらす効果で、認知症の非薬物療法の一つでもあるということです。ちなみに非薬物療法とは薬を使わない治療的なアプローチを指します。認知症の方の生活の質が向上し、脳を活性化させたり精神状態を安定させたりする効果もあると考えられています。これは軽度認知障害(MCI:認知症の一歩手前の状態にある症状)の方にも効果があると言われているそうです。
パーマー氏は「住民にトイレを使う標識が示されることによってトイレを使う可能性が8割高くなる」とお話されていました。NCLではトイレへの案内を分かりやすく表示しており、写真の通りドアにイラストを使って示したり、コントラストをつけたデザインで直感に働きかけるサインを提示しています。室内にはたくさんの扉がありますが扉の先に何があるのか考えることなく分かるように設計されています。またNCLでは個室が6室ありますがそのなかのいくつかの部屋は認識しやすいように室内の壁の色を変えてあります。使用されている色は柿色、緑色、紫色、朱色の4色で同じ色合いの椅子もリビングでは使用しています。この椅子の色なんですがトイレから戻られた利用者さんがご自分の席がわからない時に「〇〇色の椅子ですよ」という具合に誘導しやすく、とても助かっていることがあります。これらの色は床とのコントラストにもなっていますので識別しやすいのです。また、この椅子は長時間座って過ごすことを想定し座り心地にこだわったものでもあるんです。テーブルも高さが調整できますので器の中の料理もしっかり見えますし何より食事の時間を楽しめますし嚥下面でも安心です。
そして床。マットな素材を使っていますので外からの光の反射で水溜りがあるような錯覚を起こさないよう考えられているんです。ベランダとリビングの床は同じ高さでフラットになっているので車椅子でも気軽に外に出ることが出来ます。通常だと屋外エリアがあっても外へのアクセスが制限されていることが多いのですがNCLでは屋外エリアもリビングの延長線上に存在するもう一つのエリアとなっているわけです。パーマー氏のお話でも屋外エリアを活用することで生活の質が向上し、興奮の軽減、抑うつ症状尺度も低下するとの成果が認められると紹介されていました。何より生理的な利点として太陽光、自然光にあたることでビタミンDやセロトニン(脳内伝達物質で「幸せホルモン」とも呼ばれ、リラックス効果やストレス解消、睡眠の質の向上などに効果がある)を生成することができます。
いかがでしたでしょうか?
この他にもパーマー氏からはDSDCで研究されている、建築デザインが認知症の方々にもたらす様々な効果について紹介してくださいました。今回はNCLの内装デザインと絡めての紹介でしたのでその他の事案についてはまた別の機会があれば紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます!
広報:トン吉